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昨年度(H26)より東京農大総合研究所に新設された

グローバル情報研究部会の活動がスタートした。

時期を同じくして日本のTPP参加が決まり合意案をまとめるべく話し合いが進められている。

 

グローバル化と言われて久しいが、

これからのアグリビジネスはTPP抜きには考えられなくなるだろうから、

グローバル社会におけるTPPの取り扱い説明書がいる。

 

いま世界中見渡しても自分の国だけで完結出来る国は一つも無い。

多様性の中で生きて行かなければならない。

では、多様性とはどう言うことか?

 

この場合、多様性とは規模と成長スピードの違いである。

それぞれの国はその経済規模が異なり成長の段階とスピードが異なる。

この事を先ず押さえておく必要がある。

 

そしてもう一つ大切な事は、

グローバル社会においては国内vs海外と言う概念でなく、

全ての国が地球を構成する一員であると言う意識が必要だ。

 

最後に、感情論を超越すること。

 

この3点を踏まえた上で、

TPPによって近未来の日本のアグリビジネスがどの様な影響を受けるかクローズアップしてみたい。

 

昨年、タイムリーにふたつの事件が起きた。

一つは、アメリカの食肉加工会社がマクドナルド用に

中国の工場でチキンナゲットを生産して日本のお店で販売していたところ、

中国の工場で期限切れの鳥肉を使用していたり不衛生な処理をしていたことが発覚して問題になった。

 

この問題はTPPが合意したらどうなるだろう?

おそらく、中国から輸入するのをやめて日本国産

もしくは現在約12%の関税が掛らなくなるであろうTPP加盟国の原料を使う様になるだろう。

その際、生産時の衛生基準の統一ルールを決めて順守する事になる。

その後も不祥事が続き今期マクドナルド社は日本もアメリカ本社も赤字転落とのニュースである。

おそらく、全体的なサプライチェーンに影響が及んでいると思われる。

 

ニつ目は、これはTPPの圏外の話だが

ロシアが制裁措置としてマクドナルドの営業を停止させ、

さらにウクライナからの農産物輸入を止めたと言うニュースもあった。

そう、農産物は戦争の道具なのである。

いや、国民の腹を満たす為に人は戦争すると言っても良い。

 

つまり、TPPは加盟国域内での食糧安全保障を意味する。

では、TPPのマイナス点って何だろう。

 

国の格差から来る様々な問題が容易に想像できる。

農地の広さ、地形、気象条件、インフラ格差、技術 格差、経済格差(人件費格差、物価格差、所得格差)、

エネルギー格差、人口、等々。

 

要は国によって競争力に差があるから関税を無くしたら

品目によって弱い国は負けてしまうと言う論理 だ。

しかし、上の前提を思い出してみよう。

 

一国で完結出来る国はどこにも無い。

超大国と言われるアメリカでさえも自国だけではやっていけない。

しかも、2、3の国の狭い範囲内で問題を解決しようとするとゼロサム社会に陥って

どっちかが増えればどっちかが減ると言う限られたパイの取り合いの関係になってしまう。

だからと言っていっぺんに全部の国を一つのルールでと言うのは条件が違い過ぎて纏まらない。

 

そこで、地政学的に利害関係がある程度一致するグループごとに纏めようと言う話である。

さらに、グループであれば外に対して競争力が強くなると言うのは利点である。

 

それでも懸念はある。

国によって主要産業が異なることと成長のスピードの違いである。

しかもスピードは変化する。

 

TPP内の国々の状況は日々変わるからバランスが崩れる可能性は十分考えられる。

バランスが崩れそうになった時セーフガードの引き金が引けるようにしとかなければいけない。

例えばUS Beefである。

現在38.5%の日本の冷蔵牛肉輸入関税をオーストラリアと日本とのEPA合意では

18年(冷蔵は15年)かけて20%程度にすると言うからTPPにおいてはそれ以下の条件になるだろう

(オーストラリア産は既に今年度から32.5%にダウン)。

 

仮にUS産も同程度に下がったとしたらより日本人の嗜好に合うUS Beefは

現在35%の輸入シェアをさらに伸ばして50%を越えるだろう。

オーストラリア産も輸入量が増えるだろうから、

放っておいたら恐らくその時の日本の牛肉消費全体に占める輸入Beefの割合は

現在の60%を越えて70%位になるんじゃないだろうか。

 

現在約90万トンの牛肉消費量全体が伸びない限り国産牛の生産は減らさざるを得ないが、

今後ますます高齢化が進む日本で牛肉消費が伸びるとも思えない。

 

そこでセーフガードの引き金を引いてある一定数量を越えたら

輸入関税をグンと引き上げて輸入数量を減らす事になる。

しかしながら、TPPは原則0%=関税撤廃である。

実際、今年4月の日豪EPA同意でもオーストラリアへの自動車輸入関税は0%になった。

これは日本が有利な例だが、農作物に関しては日本は守る立場だ。

 

では、なぜ農作物は関税をかけて守らなくてはならないんだろう?

それは農業が土地(日本国)とくっついているからだ。

農業と土地を切り離せれば守る必要が無くなる。

もう一つの方法は農作物と日本国を切り離すことだ。

 

そう、自動車産業がそうした様に、

海外生産と日本国内生産における徹底したコスト削減と高品質化によって輸出競争力をつける事である。

それは、国の全面的リーダーシップが問われる仕事である、

と同時にその為の優秀な技術者と経営者の養成が必要である。

勿論、工業と農業は根本的に違う産業だが農業を工業化(機械化)させて大規模化させているのは事実だ。

 

また、金融機関の長期的な資金援助体制も無ければ

農業生産は時間がかかるだけに成功しないだろう。

幸い、グローバル化によって

資金は自由に世界を飛び回れる時代になり国際投資環境は以前より整っている。

 

TPPによりさらに手数料や手間は低減するに違いない。

金融機関としてのJAは日本国内で培ったそのノウハウをグローバルな舞台で発揮出来ないだろうか。

考えればまだまだ良いアイデアは出て来る筈だ。

 

TPPとは一種の複雑なジグソーパズルである。

そこにはいったいどんな世界地図が描かれようとしているのか。

ワンピース ワンピースのグローバル情報がますます重要になる。

 

Tai Takehara

@ Los Angeles



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