「グローバル思考 X イノベーション」農業・関連企業のイノベーション部会キックオフシンポジウム

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早いもので2023年もあさって22日は春節/チャイニーズニューイヤーですね。いよいよ世界中で新い年がスタートします。

こんにちは、GIAと呼ばせて頂いていますが、グローバル情報研究部会の武原です。

今回農大総研研究会に農業・関連企業のイノベーション部会が発足したとこは素晴らしいことだと思います。

グローバル情報研究部会も、新しいアグリビジネスの起点になることを活動のひとつにしておりますので、これまで色々な方々とコラボレーションしてGIAコラボを開催してきました。

私たちの言うグローバル情報とは、海外の技術、国際情勢、外国語や異文化との関係性にとどまらず、全ての事象を包括して、よりよい地球と生命の未来のために今われわれが何をしたら良いかを選択するための情報です。

そこで今回、堀田教授が部会長として発足された “農業・関連企業のイノベーション部会 キックオフシンポジウムに賛同してGIAも共催させて頂いています。

通常はアメリカにおりますが、昨年の8月に日本に来た時に東北に行って盛岡でそちらにいらっしゃる門間先生とお会いして話をする機会がありました。そのあと、門間先生から連絡があり、盛岡で武原さんが話していた話をイノベーション部会のキックオフシンポジウムで講演してくれないかと言う依頼を受けました。

最初は私の話よりも日本に進出しているアメリカの某大手流通企業のCEOを農大に呼んでそのグローバル戦略に関して講演をしてもらったどうかと言うことで進めていたのですけれども、なかなか日程の調整がつかず、それは次のGIAコラボでの機会にと言うことにして今回は僭越ながら私がお話をさせて頂くことになりました。

ただ、盛岡での話をと言われましても、盛岡では東北の美味しいお酒を飲みながらでしたので、実はあまり自分が何を話したがよく覚えていないんですよね。

ですけれども、イノベーションというのは私も好きなシュンペーターの提唱した用語ですし、農大でもいよいよイノベーションをテーマにした部会が発足すると言う機会ですのでスピーチをさせて頂くことにしました。

すでにご存知の方も多いと思いますが、昨年GIAでは入口のポスターにもあります「グローバルに未来を思考する」という本を農大出版会から出版しました。農大生協でもアマゾンでも置いてありますので宜しければ皆さん手に取ってみてください。

私の考える“グローバル思考“と言うものに関しては、大体ここに書いてありますので、この本とグローバル情報研究会のホームページ gia-nodai.com を読んで頂ければ私達のことは大体ご理解頂けます。

おそらく、農業・関連企業のイノベーション部会がこのキックオフシンポジウムを当初企画された時は、いま講演された北海道の前田さんの“農 x 加工イノベーション“と言うまさに勢いを感じる実践事例と、最初に講演された江口学長の“農 x 教育イノベーション“のお話しと、これから講演される、日本で初めて農業関連企業として株式上場を果たした及川さんの “農 x 起業イノベーション“ のお話し、そして、私がアメリカの最新アグリビジネスの色々な事例を紹介して“農かける海外イノベーション“のお話しをするというラインナップの構想ではなかったかと思うのですが、今はインターネットで検索すれば海外の最新事例は瞬時に出てきますし、Youtubeを見れば私よりも早く正確に上手に説明してくれてます。

またすでに、最近日本でも話題になっている代替タンパクや人工肉に関しては前回のGIAコラボで野村證券系のアドバイザリー会社に海外の事例を紹介して頂きGIAのホームページ(https://gia-nodai.com/代替タンパクと新ビジネス/) でその時の情報をYoutube付きで紹介してます。

そこで、今日ここでは、私はちょっと違う角度から、アメリカに居る人間の肌感覚で感じている事を“グローバル思考 x イノベーション“ と題して、少しお話してみたいと思います。

私は農大の学生時代にインド・スリランカ・フィリピン・タイ、そして休学して2年間アメリカに行き6年かかって大学を卒業してから、当時のダイエー現在のイオンですけれどもに就職して農産物の流通畑の仕事をして来ました。その後またアメリカに渡って貿易の仕事を始めるわけですけれども、ちょうど牛肉輸入自由化の流れと重なり特に食肉関係の貿易に携わって来ました。当時は、日本の貿易黒字が増大し現在とは違って円高傾向が進む状況でしたので、牛肉に限らずアメリカからの輸入農産物は日本にとって安く感じられたわけです。その上、アメリカの圧力によって自動車等の工業製品との輸出入バランスを理由に農産物の輸入関税引き下げを余儀なくされ、日本の生産農家にとっては脅威となる状態でした。そういった流れの中で日本の食生活も変化し、今では当たり前のように輸入農産物が日本の食卓の上を多く占めるようになって来たわけです。

その頃は中国もまだ国際舞台に登場していませんでしたので、日本はGDPでアメリカと肩を並べんばかりの勢いで、世界一の経済大国を目指してジャパン アズ ナンバーワンとも言われていました。今思えばあの頃の日本はグローバリズムの名のもとに踊らされていたのかも知れません。

やはり、大きな変化が起き始めたのは中国が2001年にWTOに加盟し国際舞台に登場して経済成長をしだした頃でしょう。日本の10倍以上の人口を抱える中国が農産物を買い始めたわけですから当然日本だけがアメリカのいいお客さんじゃなくなって来たことになります。

その前にすでに韓国・台湾が経済成長して日本のライバルになろうとしていましたから日本は買い負けるケースが出て来ました。

中国のGDPがまだ低い時は良かったですが経済が発展して中国の所得が上昇して来ると日本は量でも価格でも圧倒されるようになりました。なんでもプレイヤーが増えると当然競争は激しくなります。

そうなるとアメリカも徐々に中国経済にビジネス相手としてのウエイトを移して行くことになりますが、そこに来て、日本は団塊の世代が老年期に入り、国民の人口が減り始め少子高齢化により労働人口も少なくなって来ました。そうなると日本の国際的な購買力も生産力も小さくスケールダウンすることになり日本経済の閉塞感が高まりました。各国が成長するに伴い技術格差の絶対的な競争力もなくなり、そこで叫ばれ出したのが、“本当のグローバル化“ と “イノベーション“ と言うことになるわけです。日本人だけを相手にして日本の利益の為だけに働くのではなく、あらゆる世界の利害関係をネットワーク化してビジネスしていく時代になったわけです。

それなのに、何か日本は国民性の問題か日本人は特別だというような意識が強く日本国内に執着して生きているように見えます。それだけ日本が安全安心で文化的にも物質的にも豊かな国になったと言うことだと思いますが、もともと日本はエネルギーも完全に海外に依存している国です。いつまでも高度成長期の蓄えをあてにして、リスクをとらず内向きに暮らしている場合ではないような気がします。

考えてみて下さい。中国を始め各国の経済が成長したと言うことは、それだけグローバルに日本の農産物を買える国が増えて来たと言うことです。まして、コロナによるパンデミックも解決し世界的なインフレによる最近の円安の傾向からすれば今こそグローバルに打って出る時でしょう。世界中の人に日本に来てもらい、また日本人が世界に出ていく時代の到来です。2、3日前のスイスでのダボス会議でも日本の経済再生がテーマになっていました。日本の地方経済再生じゃないですよ。世界の中の日本の経済再生です。世界には80億人の人がいるわけですから日本の一億人は世界の80分の一でしかありません。

グローバルに世界中の人と渡り合う為には、あらゆる壁を超えたグローバル思考が必要です。そして個人にとっても企業にとってもあらゆる壁を越えるためのイノベーションが必要です。

ところで、イノベーションって何でしょう。イノベーションは直訳すると革新するという意味ですが、経済学者のシュンペーターは言っています。「イノベーションとは異なるものを結合させて新しいビジネスを生み出すことだと。」それも出来るだけ離れた異質なものを組み合わせると良いようです。きっとそこに劇的な化学変化がおきて発想の転換がおこり新しいアイデアが生まれるからでしょう。イノベーションの語源はInとNovとAtionでNovはNewのことですから、“新しいところに行って何かをする“と言うことです。ただ気をつけないといけないのは、イノベーションはどこか新しいところに行けば転がっているものではないんですね。人は迷ったり困った事があると、何か外側に答えがあるように思いがちですが、それはすでにあるものですから新しくはありません。イノベーションは自らが内側から発生させるものです。その為には己を知る為に外側から内側を見なくてはなりません。その為に新しいところに行って外側から見る必要があるんです。ここには(日本を)と書きましたが、これは企業であっても、自分自身であっても同じです。外側から見ることによって見えてくるものがあるんです。それがイノベーションの種になると私は思います。

でも、新しい発想/アイデアだけではイノベーションになりません。それを実行しなければ現実には何も生まれません。実行してそれをスケールアップして初めてイノベーションと言えるものになるわけです。

ここまで、何か私が日本をネガティブに捉えているように聞こえてしまっているかも知れませんが、そうではないんです。私は日本にすごく希望を感じているんです。

このあいだのサッカーワールドカップを見ても、最近は今までの日本人のイメージと違いますよね。タナカにしてもミトマにしても、身体は、脚は長いし顔は小さいし、頭は、云われた事だけじゃなく自分の頭で考え判断して動けるし、メンタルは、自分より格段に高いレベルの相手にも負けないし、日本人は変わって来てますよね。大リーグの大谷しかりです。ひとつ言えるのは、活躍している人達は皆んなグローバルで戦ってますよね。外側から日本を見てイノベーションに挑戦している人たちなんです。

今、世界は色々な壁に直面しています。気候変動、環境問題、人口問題、そして食料問題、さらには戦争、パンデミック。これらの壁を乗り越える為に、ひとりひとりが知恵を絞って困難を切り抜けなければならない時代に我々は生きています。この答えの見えない社会を生きて行くにはどんな壁に遭遇しても、それを成長のチャンスだと捉えて、グローバルな思考と行動力でイノベーションを興し、新しい時代を作っていく、そんな人達が農大からも育っていくことを本当に期待しています。

昨日、東京工業大学が東京医科歯科大学と一緒になって東京科学大学になると言う発表がありました。東京科学大学の学長になる方が、日本の科学は文化になっていないから科学を文化にする為に一緒になるんだと言っていました。そこで私は思ったんですね。それは工業と言うものが生まれて数100年しか経っていないからじゃないか。農業は1万年以上の歴史を持っていますから既にアグリカルチャーというカルチャー/文化になっていますよね。農業こそ人間の生活全てに溶け込んだ文化だと私は思います。

今日は多くの学生さん達も来ていますし企業経営者の方々もいらっしゃっています。ぜひ、未来を作る若者の皆さんと、それをリードして共に成長する企業経営者の方々が、農業でイノベーションを起こして日本の未来、グローバルの未来をより豊にして頂きたいと思います。

(by Tai Takehara 1/20/2023)

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