筆者(農大総研GIA 大門 龍博)はこのたび、アメリカ合衆国西海岸で水産品の試験販売にたずさわる機会を得ましたので、当研究会会員の皆様に報告を致します。
本試験販売は農水産物の輸出拡大を目指す日本政府の計画の一環であり、補助事業として行われました。
スキームとしては、自治体(筆者の勤務企業が所在する)が関連機関や市内の民間事業者と輸出推進の団体をつくり実施主体となり、実務はコンサルタント会社に業務発注をし、計画立案及び現地との折衝が行われました。
本年度はアメリカの他、欧州、東南アジアの計3か所で試験販売を実施する計画であり、アメリカに先だって東南アジアで水産品、青果品の試験販売が行われました。
スーパーの立地する地域は日系企業が多い地域であり、スーパーの客層も5割が駐在日本人や日系人、アジア系が3割、その他が3割ぐらいになります。
店内には日本語を話すスタッフが多くおり、店内の表記も日本が多く、広さや店舗構造も日本の郊外型スーパーと同じようであり、陳列商品も日本のものが多くまるで日本のスーパーそのままです。
試験販売は西海岸の日系スーパーで土曜、日曜の二日間にかけて行われました。
当日販売は上記団体の会員企業のうち水産関連企業3社が中心となり、筆者含むその他企業社員や市職員やコンサルタント会社社員に加え、現地企業の方も人を出し行われました。
使用した水産品は国産のものを、全て空輸で現地に送り込みました。
我々が販売を行ったのは刺身(単品及び盛り合わせ)、海鮮丼、魚体そのまま(さんま、カニ、ウニ)の3種類です。
単価は海鮮丼で10ドル~15ドルぐらい、刺身で5ドル~25ドルぐらいの設定です。
結論から言うと、刺身、海鮮丼は予定より早く完売、魚体そのままは苦戦でした。
日本人、日系人が多い店舗でしたが、海外では、すぐ食べられない魚体そのままの商品は難しいと実感致しました。
逆に、店舗で加工をほどこし、すぐに食べられる商品は海外でも勝負になる事が良く分かりました。
このようにイベントとしては成果をあげる事ができた試験販売ですが、課題が無いわけではありません。
単価の設定は通常かかる経費をのせた販売価格から2割から3割程低く、プロモーションに係る人件費ものせておりません。
したがって、商品レベルや仕入れ方法、商流物流コストの見直しは今後の継続性を考える上で必要になります。
水産の売場には今回持ち込んだ水産品ものと同様の商品が既に多くあり、品質や値段的にも悪くありませんでしたので、新たな商品を納品させるには商品の差別化やストーリー付けも並行して作り上げる必要があります。
又、今回は開催場所となった日系スーパーに無理を言い、売れやすい環境で行う事ができました。
今後は同じ内容のイベントでも現地系やアジア系のスーパーで通用するかも検証する必要があると考えます。
西海岸だけで3ヶ月に10の自治体が同じようなイベントを開催したと聞いておりますが、ほとんどは単発のイベントで終わってしまったようです。
これが補助事業頼みの難しい所で、いかに販売を継続させ新たな商流を作り上げるかが、問われています。
今回の課題をいかし、来年以降の活動に続けられればと考えております。
以上
(Wrote by 大門 龍博 農大総研GIA)
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