はじめまして。GIA学生会員の高橋です。私はカンボジアを対象に稲作経営研究をしています。今回は3年前に調査を実施した稲作主要地帯にある農村への再調査を目的にカンボジアへ3か月滞在してきました。
カンボジア滞在中は留学時代からお世話になっているカンボジア王立農業大学を拠点にして、農村調査を進めています。私の調査村はコンポンチャム州のメコン川沿いに位置する稲作農村です。
今回の調査期間中はちょうど収穫時期と作付け開始時期とが重なり、農家さんはみなさん大忙しでした。
調査地の水田は大きく分けて二に大別できます。一つは調査村の周りを囲むように広がる雨季田で、早期雨季作と中期雨季作の二期作が可能です。もう一つはメコン川から雨季に増水した水が氾濫する場所に位置する減水期作です。今回の調査時期は雨季田の中期雨季作の収穫が終わり、減水期作の高位の水が引き始めた田での直播が始まった頃でした。
調査村の稲作農家は雨季田での二期作と氾濫原での一作の年三作を行っています。ここからは、少し写真を交えて調査村での稲作経営調査の様子をお話しさせていただきます。
これは雨季田の二期作目である中期雨季作が実りを迎えたところです。あと1週間ほどで収穫予定の田。
大型コンバインで収穫された米。家の軒先に山積みにしたものを少しずつ庭に広げては天日乾燥させています。
乾燥させたものは袋に詰めて家庭消費用米として備蓄しておきます(安定した生産が可能な中期雨季作は家庭消費用米として生産する農家が多い)。
まだ実の青い稲。これは牛の餌として中期雨季作の収穫を終えた田から、また生え始めた稲を刈り取ってきたもの。牛も稲を食べるのです。
こちらは減水期作の直播用に「芽だし」をした種もみ。これを一晩袋にいれて置いておき、翌朝、直播に出かけます。
減水期作の田んぼ。手前が高位で奥に進むほど低位になっており、雨季に氾濫した水が引いていくのを追うようにして直播きが行われる。手前が収穫済みの田です。その周辺には稲穂が黄色に輝来はじめた田があり、奥の低位に行くほど直播きを終えて青々と成長する稲が田いっぱいに広がっている。
調査が終わる頃には、源水期作の収穫が始まっていました。
私のお世話になっている農家さんの源水期作の田での収穫時期は高位に位置しているため、低位の水田よりも早いです。(氾濫原の水田は高位に位置する田では2月上旬には収穫が始まります。このとき低位の水田では水が引きはじめ、直播きおよび移植作業が始まるところで、収穫は遅いところで4月中旬のお正月ごろとなるのです。)
上の写真は手動収穫機で稲刈りを行った後に稲を乾燥させるため、田の一角に積みあげて一日置いたもの(はさがけのようなものです)。右の写真はそれを前日に携帯電話で依頼しておいたハンドトラクター所有農家の荷台へ稲を積んでいるところです。
作業を終えて自宅に戻ると次は携帯電話で呼んでおいた脱穀機所有農家と田から持ち帰った稲束を自宅前で早速、脱穀する。そして、袋詰めを終えた米は3軒隣の小売り農家へ直接運び、全て販売してしまいました。すでに自宅には家庭消費用に生産した中期雨季作の米が十分確保されているのです。
私の稲作経営調査の聞き取り時の様子です。
調査の際、私は必ず私の他にもう一人お手伝いを友人にお願いして二人体制で聞き取りを行っています。私の友人であるカンボジア王立農業大学の学生やフタッフにお手伝いいただきました。詳細かつ正確なデータを得ながら、農家さんから実際の稲作経営について詳しく聞いていくためには彼らは重要なパートナーです。農家さんが好きで、彼らに対して尊敬の念を持って接する姿には頼りがいがありました。
農家さんへの聞き取りの他にも郡長や村長への最近の地域の様子や暮らしぶり、村の歴史について聞かせてもらうこともあります。(これは村の区画ごとの土地区分が示されている地図を見せてもらっているところ。)
私の調査のスタイルは農村滞在型の調査を行っています。農村滞在を通じて、農家さんの日常を少し覗かせてもらい、その中で人と人のつながりや女性、男性、世代といった村の人々が作り出す村の様子を垣間見るのです。それは、稲作経営調査を分析し、カンボジア稲作を研究する者にとってはとても貴重な瞬間だと言えます。(左の写真は村内で行われた法要の料理用に食材を用意する村内の女性たちの様子です。男性は調理を担当します。亡くなった老女は98歳と長寿でした。右の写真は農作業の合間をみてこっそりと集会をひらく農村の男性たちです。皆さん上機嫌です。)
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