トランプ大統領はなぜ勝てたか

講演会レポート
6/8/2017 by Toshi Kamazuka

 

去る6月3日(土)、群馬県前橋市国際交流協会の国際理解講座『エリート・ジャーナリストには伝えられない真実 ~トランプ氏はなぜ勝利できたか~』とのタイトルで講演会を行わせて頂きました。

これは当協会理事の内山先生のご厚意とご推薦により実現したもので、内山先生ご立案のその刺激的なタイトルの影響か通常の倍近い60名以上の参加者の皆様がいらっしゃいました。

 

内容は、甚だ個人的ではありますが私の約27年に及ぶ北米生活の中で感じた一般庶民視点でのアメリカ大統領選とその背景にあるアメリカ文化についてでした。

 

アメリカ国土は日本の約24倍、人口も3倍もおり、人種はもちろん文化や宗教、経済格差も我々日本人が想像も超える多様性を持っています。そういった意味では今回の大統領選も簡単な図式で語ることは不可能だと思います。

今回の私の視点は、1980年代半ばに農大在学中に一年間休学しアメリカ・オレゴン州の大規模農場を渡り歩き、ほぼ100%白人しかいない環境での暮らし(実際この一年間は日本人、アフリカ系アメリカ人それぞれ1回ずつしか会いませんでした)や、約2年半前に日本に帰郷するまでの20年以上をロサンゼルスで過ごし、アメリカ西部最大のアフリカ系アメリカ人居住区であるサウスセントラルLAでの実体験などがベースになっています。

現在、ちょうど30年近くアメリカと共に暮らして実感するのは、1950年代以降にすすんだ市民権運動や80年代以降に人種を問わず若者たち全般に浸透したヒップホップ文化など、文化的な多様性や社会的な寛容さなど有色人種の自分に取っては暮らしやすい方向に進んでいたとばかり思っていたアメリカですが、今回の選挙結果ではその発展に対しての揺り戻しがあったのだと実感します。

 

大統領選については既にプロによる数多くの解説と分析が行われておりますので、講演にお越しになった皆様に感じで欲しかったのは、国際政治記者の上段から構えたニュースレポートや格式ばった厚いアカデミックな論文とは一風変わった、自ら独自の着眼点を持ちおのれの足元や社会の路面に近づけた市井の視点。『稲のことは稲に聞け、農業のことは農民に聞け』の金言のごとく、アメリカに暮らす人々の肌の温かささえ感じるような一般市民としての至近距離と実感値でしたので、私のアメリカ人知人達に送ってもらったビデオレターを上映したりと工夫を凝らしました。

 

ビジネスマンとして大成したトランプ氏ですが政治手腕自体に疑問符が付くでしょうし、弾劾の可能性はもとよりそもそも国内問題にも加えテロや世界的な経済不安など不確定要素が多すぎ、今後の進展は予断を許しません。

アメリカは我が日本とも緊密な関係にありますので、これからも興味深く見守っていきたいと思います。

 

なお講演後には数多くの方々との質疑応答もあり非常に有意義な時間だったと感じています。

海外駐在経験の長い方が『トランプさんに投票した人々は瞬間的に溜飲を下げたかもしれないが、これからのアメリカの進む方向性によっては結果的には実利を取れずに地団駄を踏むことになるのでは?』とのコメントに激しく同感せずにはいられませんでした。

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