Written by Makoto Takazawa
2024年7月11日から14日まで、ブラジル国サンパウロを訪問した。成田空港からカタールのドーハに向かい、トランジット後サンパウロまで約30時間かけて到着。私のブラジル訪問は今回が10回目。今回の目的は、南米最大の日系人の祭典「日本祭り」に参加するため。日本の農林水産省が日本祭りに合わせて「第1回ふるさといいもの展」を同時開催するという事業に採択されての訪問だった。
私は千葉県の企業が主に日本酒を輸出したいという企画に同行し、私の知り合いの日系人にブースに来てもらうという役回りであった。日本からは40の都道府県から約100名が参加。紹介したいものも様々で、日本酒のほかに札幌ラーメン、喜多方ラーメン、鹿児島の焼き芋、鳥取のどら焼きなど実にバラエティに富んだ内容である。サンパウロのエキスポセンターの1階全面で、ブラジル県人会の皆様がそれぞれの郷土料理を販売している。数百席のテーブルと椅子が用意され、その隣のエリアでは、茶道の裏千家や、自動車のトヨタ、食品のヤクルトや日清などがブースを構える。日本の東京に例えれば、ビッグサイトか東京ドームの「全国うまいもの展」という雰囲気である。
4日間の忙しい時間の中で、希望者はジャパンハウスに出かけた。JAPAN HOUSEはロンドン、ロサンゼルス、サンパウロの3都市にそれぞれ事業拠点を開設し、展示スペース、シアター機能のある多目的スペース、物販、飲食、書籍/web/カフェなどの活動を融合させ、 伝統の未来、 大衆文化の熱、ハイテクノロジーの実力、多様な食 の魅力等を具体的 に紹介・提示し、これまで日本に興味を持っていなかった人々も含め、幅広い層に向けて活動している。サンパウロは世界3か所の中でもとびぬけて来場者が多いそうである。1階には日本酒とウイスキーの試飲、販売コーナーもあり、日本のサントリーが協力している。今回、日本の福島から参加した大和川酒造は、「弥右衛門」などの日本酒をすでに輸出している。ジャパンハウスでは、日本の風呂敷、葛飾北斎の紹介(ちょうど日本で新札が発行され、千円札の裏側は葛飾北斎の神奈川沖浪裏)など日本の文化が紹介されていた。
今回の「第1回ふるさといいもの展」では、サンパウロ在住の県人会の皆様がホストとなり、日本からの参加者を出迎え、交流を深めるという仕組みになっていた。私は千葉県から参加したが、千葉県人会の中内様(日伯友好病院の医師)、日本祭り千葉県ブースの責任者の原様などに食事を提供していただき心温まる交流ができた。
日本祭りのテーマは、「生きがい」「目的をもって生きる」。このテーマが物語っているように、ブラジルでの貧富の差、凶悪な事件など負の面も併せ持って成り立つ社会の中で、日系人がどんな役割を果たせるのか模索が続いているのだと感じた。最初の移民から116年たち、日本語が話せる人もわずかになり、これから「日系人」がその精神・スピリットを維持していけるか、岐路に立っているのだと思った。それでも多くの日系人は、そのことを誇りにしており「ジャポネース ガランチード」(日本人は信用できる)という言葉まで生まれている。
最後に、日本語と日本文化を後世に伝えていく活動をしているブラジル日本文化福祉協会の山下譲二様のことを紹介したい。山下さんは幼い頃、鹿児島から移民してきたそうで、家の壁に和歌が飾ってあったそうです。「母が日本のことを忘れないようにという教えだった」と言います。その和歌は、本居宣長の「敷島の大和心を人問わば 朝日に匂ふ山桜花(やまざくらばな)」であったと。今でも忘れることはない。山下少年は、母の想いをりっぱに受け継いで、今また日本文化の伝承にご尽力されていることに感銘を受けました。今でも飛行機で片道30時間かかるという絶対的な距離と時間の大変さを理解する者同士、参加者は皆、様々な温かい親交を重ねて、4日間の事業は無事終了し帰路についた。
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