農業の教育と普及の国際化を考える-APEAEN日本支部の立ち位置-

ASEANは、今年域内の経済共同体(AEC)が結成されます。

ASEAN域内では、貿易と投資の自由化が行われ、

金融や財政など諸制度の大幅な規制緩和も今後進んでいくものと予想されます。

平たくいえば、EUのASEAN版が始まるということです。

 

中国は、今後減速経済へ移行することが予想され、

また韓国や台湾にはかつての勢いがありません。

ポスト・チャイナとして成長著しいASEANが注目されるわけです。

 

年齢構成の若い5億人あまりの人口をかかえ、

成長加速で経済規模も大きくなってきたASEAN市場を

わが国がどのように取り込んでいくべきか。

このことは日本の経済再生を図るうえできわめて重要なポイントです。

 

今後市場規模が縮小の傾向をたどることが確実なわが国にとって、

製品やサービスの販売市場をASEANなど近隣諸国へ求めることは

当然の成り行きといえるでしょう。

 

ことは販売市場だけとはかぎりません。

ビジネス事業の投資先としても有望視されています。

 

さらには、サービス活動を中心とした労働力のわが国への受け入れ、

海外への低利資金の貸し付け、土地の貸借、知的所有権の一部開放と技術移転、

有望な人材のわが国での教育機会の提供(資格の認定など)などを通じて、

密接な関係が構築されていることが予想されます。

 

いいかえれば、TPPに先んじてASEANとのEPA(経済連携協定)が

急速に進んでいきそうな 様相です。

今後、ASEANとの関係は、農業分野あるいは食料・農業関連ビジネス分野でも、

大きく進展していくものと考えられます。

 

わが国の良質で安全な農産物・食品を輸出し、

またわが国で競争力に乏しい農産物・食品を輸入する。

わが国の種苗、農業機械、プラントなどを輸出する。

あるいはそうした農業資機材企業が現地に移転して工場を稼働させる。

わが国の食品製造企業や農産物・食品流通企業がASEANで事業をさらに本格化させていく。

あるいは、圃場整備、かんがい排水施設や道路の建設、保冷庫の建設などのインフラを、

わが国のODAと関係させながら整備していく。

 

こういったことがごく当たり前になっていくことが予想されるし、

現にそういう形で進んでいます。

農業に関わる労働力の移転や資金の低利融資なども

さらに活発化していくことでしょう。

 

こうした状況の変化とその予想を考えれば、

農業教育や農業普及の面でも国際化が今後急速に進んでいく状況にあることを

正しく認識しておかなければなりません。

 

ほかの諸国の人材育成はわが国でもあるいは海外の現地でも実施されるでしょうし、

また農業普及もその仕組みやノウハウを海外へ伝達していくことは実際に起こりうることです。

そのサービスの供給によって、

海外から日本の公益企業や民間企業へ報酬が還流していくことも考えられます。

 

品質と安全性にすぐれた農産物・食品を輸出拡大するとなれば、

そのための受け皿づくりを海外に築き上げていくことが必要になるでしょう。

まさに、現在農協で行われている事業の海外展開がもうそこまで迫ってきているのです。

 

第6回APEAEN国際大会(フィリピン)

*第6回APEAEN国際大会(フィリピン)

 

私たちAPEAENは、こうした動きに対して鋭敏なアンテナをもち、

正確な情報を受発信していく機能を果たさなければならないと考えています。

農業の教育や普及は、もはや国内で完結る時代ではなくなってきたことを

深く認識することが重要です。

 

教育や普及はまた、国際的な流れを視野に入れて

公的機関と民間が相互に連携しあって活動を進めていくことになるのだろうと考えています。

APEAENの果たす役割は無限に広がりつつあることを深く認識する必要がありそうです。

 

*APEAENとは、「アジア太平洋農環境教育学会」の英語略称です。

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