1/24/18に農大世田谷キャンパスで開催された「農大総研稲コメごはん部会xグローバル情報研究部会(GIA)コラボセミナー」は、生憎の降雪にも関わらず足元の悪い中全国各地から約200人の参加者が農大アカデミアセンターにお集まり頂き盛会のうちに執り行われました。ここで、今回実施しましたGIAコラボ企画に関して簡単に総括しておきたいと思います。
まず最初に、今回のコラボセミナー実施に際し稲コメごはん部会の佐々木教授とグローバル情報研究部会の立岩教授に心より謝意を表します。お二人の農学に対する熱意と広く深い学識なくしては今回のコラボセミナーは実現しなかったものと思います。また、全体の進行がスムーズに行なわれたのは辻井准教授の準備とシャープな判断力のお陰に他なりません。また、農大総研はじめ学生を含めた全ての協力者の方々に心より感謝いたします。
GIAホームページ(gia-nodai.com)上の”ライブビデオ”を観て頂ければ全講演がUPされておりますが、横井講堂で行われた講演会は、お米に対してそれぞれ異なる角度から3人のその専門的な経験と研究から来る知見を様々な例題をあげて論理的に且つ明確に述べて頂き、いずれも個性的でインパクトのあるスピーチであったと思います。
最初の講演者である東洋ライス雑賀社長のスピーチ「コメは我が国の救世主になるだろう!」は、日本の高齢化社会が抱える大きな問題である医療費の増大の解決策として、主食であるお米のそれもヌカや胚芽の効能を上手に利用した金芽米や玄米を積極的に食べる事で日本人の健康を増進させその“薬食同源”の考え方のもとに社会全体を改善すると言う、彼の信念とも言えるお話をビジネスにおけるサクセスストーリーと共に拝聴することが出来ました。84歳の雑賀氏がまさにお米の伝道師の如く説くそのお話には非常に説得力を感じました。日本人一人当たりのお米の消費量増加にも寄与するものと思います。これからも益々お元気にご活躍される事をお祈り致します。
2人目の講演者である農大で国際農業経済がご専門の立岩教授のお話「カルフォルニアの米産業」は、ご自身の長年にわたるカリフォルニア米研究の成果を一気にご講義頂き、おそらく当日会場にいらした参加者は本セミナーでカリフォルニア米の生産から精米にかけての全てが把握出来たものと思います。アメリカで美味しいジャポニカ米を作ろうと日本から移住した日系人が戦争を挟んで数々の困難を克服しながら現在のカリフォルニア産短粒・中粒米を生産するに至った歴史とその技術開発の現場の情報を数々のデータをもとに非常に詳しくお話頂きました。まさにお米の国の日本人だからこそ出来たアメリカのカリフォルニア米と言う感じがしました。これは、単にお米の話と言うだけでなく日本農業がこれからどの様にグローバル化の中で展開していくかを考える上での良い教材になるお話だったと思います。
3人目の講演者であるロサンゼルス在住のスーパーキャトル社武原代表の話は、カリフォルニア米の流通とマーケティングを説明しながら「カリフォルニア米が上手いか?不味いか?」その味を参加者と一緒に解き明かそうと言う試みでした。人種の坩堝と言われるアメリカ社会でアジア系を中心に消費が拡大しているお米の日系・韓国系・中国系スーパーマーケットでの販売の様子を写真で紹介。そして、今回のセミナーの為にカルフォルニアで売られている10種類(カリフォルニア産9銘柄+日本産1銘柄)のお米を輸入し、お米の味を機械的に計測出来る”味度メーター”で事前に数値化し、その味と価格のバランスをグラフで可視化して各銘柄を比較。さらに、講演会に引き続き行われたアカデミアセンター8階での情報交換会場に電気釜を並べてカリフォルニアから来たお米を実際に炊いて試食し、その味覚アンケートを官能評価シート方式で参加者の皆さんに提出して頂きました。ぶっつけ本番という事もあり条件にバラツキもありますので学術的なデータとしては不十分ですが、日本で複数のカリフォルニア米を一度に試食出来ると言うチャンスもなかなか無いので参加者の皆さんには喜んで頂けたものと思います。また、ある意味先入観なしに楽しみながらカリフォルニア米の味を評価して頂けたものとも思います。下のグラフがデータの集計結果ですが36名の方が10段階でアンケート用紙に回答してくれました。参考データとしてご覧ください。
旨味・粘り・香り・食感・外観の各項目の特性が銘柄ごとに表されています。五角形の面積が大きいお米がより美味しく感じられた(評価が良い)と言うことになります。また、人間の舌の感じる旨味と味度メーターの機械的な評価が類似していると言う興味深い結果も得られました。玄米で輸入した田牧米を日本で精米したものの評価が高くなったのは、東洋ライス製の米糠の量を0.1mg単位で調整できると言う最新の精米機で直前に精米して頂いた技術力によるものと思われます。また、試食会用に玄米を精米する為に協力してくれた農大総研の加納さんと厚木キャンパスの桑山先生そして世田谷キャンパスの上地先生に感謝いたします。
今回のセミナーに参加された方々が実際にカリフォルニア米の味をどう理解されたかは分かりませんが、世界での年間生産量4億7000万トン(精米ベース)のうち日本は約800万トンですから世界のお米のマーケットの98%は日本の外にあると言う環境を考えれば、お米の国の日本人がグローバルな米マーケットの中でどの様な影響力を将来的に担って行くかを考える良いきっかけになったのではないでしょうか。カリフォルニア米の味がどのくらい美味しいのか不味いのか? これからも追求して行きたいと思います。
最後に、「農大総研グローバル ラボ」を農大キャンパスに協力して作ろうと言う提案がありました。シャアリングによる相乗効果を農大総研研究部会で最大限に高めてGlobalとITとAgricultureの3つのキーワードで産学官連携を推進すれば農大発の新たなイノベーションに繋がると共に、SDGs/持続可能な開発目標にも貢献出来るものと考えられます。
全体の感想としては、3人のスピーチの独自性を活かしながら関連性を持たせたストーリー性のある構成で情報交換会も含め全体を通して一貫性を持ったセミナーであったと思います。また、コラボセミナーによる視点の広がりとメッセージ性も出せたのではないでしょうか。高野学長もご出席され和気藹々の雰囲気の中で皆で乾杯し、農大のさらには世界の発展の為に多くの参加者の方々と交流を深め盛会のうちにコラボセミナーを終われた事は、稲コメごはん部会・グローバル情報研究部会(GIA)両部会にとって次のステップに向かっての成果になったものと信じます。
2018年2月 by チームGIA
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