新型コロナによって多くのサービス業、特に飲食店が倒産しようとしている。
この厳しい状況に、地球上すべての飲食店経営者の誰もが絶望しているのであろうし、自身も神田で15年続けている御茶ノ水ビンデンのオーナーという立場で言うと、日本独特の「空気の力」と従業員の家庭状況など鑑み、また東京都の営業自粛要請により、一ヶ月休業をすることにしたが、先月注文した仕入代、千代田区ゆえに高い家賃、正社員アルバイトの賃金、その他諸々の支払いが売上もないのに重くのしかかっている。この状況下ゆえ、スタッフにも協力してもらいたいが、それが出来ない。いま一人で戦い続けている同業者の皆様、この危機を共に乗り越え、何年かかるか分からないが日本経済を良くしよう。
さて、話を戻すと、このような状況下でも生き残れるよう、私は三年前に当店を買収してから対策を講じてきたつもりだった。
現金主義だった私でさえ、消費税増税のタイミングで国が推奨するキャッシュレス決済を活用して、販売価格を上げても客数を伸ばすことが出来たし、PayPayアンバサダーとして飲食店における新たなるコミュニケーションツールを生み出したと云っても過言ではなかった。選択と集中をし、私が現場に居なくても、スタッフ3,4人で経営できる環境を築けた。昼営業だけだが、飲食店併設の直売所や健康コンテンツの販売という飲食ビジネスの展開が功を奏した。
その結果、日本政府や自治体が類を見ない補償政策を打ち出してくれたので、現実はそれだけ恩恵を受ければなんとか経営が出来るが、流石に7月までこの状況であれば経営維持が難しくなる。これは神のみぞ知る世界だが、資本主義は人類史上最高のゲームゆえ、ただ祈っているだけではいけないので、何かしらの対策を講じる必要がある。
では、テイクアウト、デリバリー、ネットでの通販が有効かというと、私見を申すと、大量出血しているのにバンドエイドをつけるような簡単な処置であって、「やらないよりはやった方がまし」と考えている飲食店経営者が多いのではないだろうか。特に東京都内の居酒屋などは。ただ銀行との取引があって融資を受け続けることが出来、抽象度が高いフードビジネスとして昇華し、その経営スタイルを確立している経営者であれば何かしらのツールを使わなくてもいいと思うが、この記事を読んでいる大半の方々は「飲食店経営×〇〇」という飲食事業を考えていることであろう。
それらを踏まえ、これから叙述することが皆様の想像力を喚起し、集客もしくは利益に直結する活動になれば投稿者冥利に尽きます。
【そもそも販売戦争を勝ち抜くための正しい戦略を取れているか】
ニュースやネットなどで大手企業の戦略事例などが紹介されるが、中小企業や個店がそのまま大手企業の事例を真似しても役立たないことが多い。これは双方に合った戦い方が180度違うからだ。そこで中小企業や個店は、弱者の戦略である「ランチェスター戦略」を取り入れることが正しい戦略を取るためのポイントとなる。ランチェスター戦略は、世界でもっとも広く利用されている戦略の1つであり、弱者が強者に立ち向かうための戦略手法である。実際に多くの企業が実践し、競争を勝ち抜き売上を伸ばしてきた。
【ランチェスターの法則とは】
1970年代前半にオイルショックが起こり、それまでの高度経済成長期から一転して日本は不況に。市場縮小期に、企業はどうやって勝ち残るのかを考えたという。コンサルタントの草分けの田岡信夫先氏は、それまでのスピード勝負や体力勝負によらない、科学的で論理的な経営戦略が求められると考えたという。成熟市場で企業がいかにサバイバルするかを指導するのがランチェスター戦略であり、取り入れた企業は大不況を乗り越え、今日も繁栄しているのです。
さて、ランチェスターの法則とは「戦闘力は・・・兵力の質×量」です。
戦いにおいて、戦闘力はとても重要ですが、これを数学的かつ定量的にアプローチすることをはじめて論じたのがランチェスターである。極論だが、一人で料理も接待もでき、併設したショップで野菜やジャムも売ることが出来、固定客には通販販売へと誘導するということができればかなりの高スペック経営者である。
戦力差を算出可能にした細かい法則はここでは割愛し、ランチェスター戦略の基本オペレーションに移りたい。奇しくも、今回弱者の取るべき戦略を選択することになったのであれば、兵力数は増やせないので、運用方法には工夫の余地があるかと。局地戦に持ち込み、兵力を集中することができれば、その局面においては兵力数をライバルよりも多くできる。軍事用語でいうと「局所優勢」というそうだ。局所優勢の状況を維持し、各個撃破していくことになる。
東京都知事が危険視する「三密」リスク回避という事を踏まえると、大きな箱に大量に集め、飲み放題コースで〇〇〇〇円という格安集客方法という魔法が使えないかもしれないので、コンセプトの再定義だけでなく、珍しい食材や独自の料理が光る時代つまりは料理人の腕が再認識されることであろうし、質的優位を築くために違った売り方をするのも手であろう。飲食店における弱者が強者に勝てる時代がコロナを契機に到来したのではないだろうか。
ランチェスターは強者を「マーケットシェアが1位の企業」と定義しているが、正直日本の飲食店とくに東京都内では同じモデルが多いし、なぜこの会社のフランチャイズ展開が拡大しているのかが理解できなかった。厳しくなりつつある市場では、どんな市場でもいいので「シェアナンバーワンを目指すこと」である。
売上が業界一位の大企業でもすべての市場で連戦連勝というのは難しいので、市場を細分化し、小さくても1位になれる地域や領域、ターゲット、商品、シナジー効果が生まれる新ビジネスを生み続ける環境作りをして戦いを挑めば勝てる業界であるといえる。ニッチにすればニッチにするほど、中小企業や個店でも勝てる可能性が高まる業界だと信じている。
まずはニュースやネットで話題になっている小手先のツールに頼るのではなく、ランチェスター戦略の本を一読いただき、自分だけの最高で唯一の「飲食店経営×〇〇」を見出していただきたい。これから川上で言えば産地や生産者、川下で言えば異業種や顧客とのシナジー効果が生まれると思うし、GIAが提唱している異業種コラボレーションが発揮される時代でもある。皆の想像力を最大限生かして日本の経済を復興させましょう。
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