ヨーロッパにおける米消費の現場から

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本年3月にヨーロッパ(パリ、リスボン、マドリッド、ロンドン)の米消費調査を行った。今回は、一般消費者がコメを購入するであろうスーパー・食料品店などを中心とした調査であった。

「日本食」の国際的ブームが言われて久しいが、「非コメ食文化圏」での一般消費者は、コメをどう消費しているかの視点から、主にテイクアウト食材や弁当等すぐに食べられるかたちのコメ消費を中心とした調査だった。

スーパーの調査では、スシ、弁当、おにぎり等が主流であり、「購入してすぐに食べられる」、「簡単な加熱後に食べられる」ものが多かった。日本のお弁当屋やスーパーの弁当販売コーナーでの販売と類似している。スーパーでの販売形態からいえば、一般消費者のコメ消費は昼食用弁当あるいは持ち帰って簡単に加熱して食べる形態が多いと思われる。コメを「主食」として考えるアジアのコメ食文化圏にしても、「中食」と呼ばれる弁当やおにぎりなどでの形態が一般しているが、上記ヨーロッパの都市に於いてもやはり「中食」がコメ消費の現場に浸透していることがわかる。調査がスーパーを中心としたものであったための特徴でもあるが、一般消費者は「米飯」を購入しスープや「おかず」と一緒に食べるという形態ではなく、日本で言う「中食」的消費が多数を占めている印象を持つ。

アメリカ2

たいた「米飯」もないわけではない。炊飯器の普及が遅れているヨーロッパの一般消費者にとって、コメに興味がありつつも「炊飯器で炊いて食べる」のには時間と費用がかかり、一般化していないと思われるが、電子レンジなどでの加熱を要する「米飯」が、わずかだが売られていた。消費者層は若者層だという。「米飯」を買い、他のものとアレンジしつつ食べるための購入と推定されていた。

上のような「中食」的消費向けと炊いた「米飯」とは別に、加熱して食べる「リゾット」や「スープ」用のコメ加工品も多くの品目が売られていた。こちらは、「中食」用というより、自宅に持ち帰り「おかず」あるいは「スープ」として消費されるものらしい。

一方、アジア系市民の増大を背景に炊飯器での炊飯があり、その消費者層には日本と同じような「精米」消費も一般的であるという。500グラム程度の小袋に詰められ、こちらは多くの種類があった。「長粒種米」もあったが、寿司用をうたった「短粒種米」も多く見受けられた。「寿司」がポプュラーな日本食として認識されていることは知られているが、小袋詰めの「精米」消費者の多くは、日本人等極東アジア人だという。最近では、白人層の購入者も増えているが、炊飯器での炊飯ではなく「鍋」等での炊飯が広がりつつあるという。

「精米」での購入は、日本人やアジア人が考える「おかず」が必要ではないかと想定するが、炊いた米自体が「おかず」という感覚での消費が普及しているらしい。

炊飯器は、アジア人が多い地域で売られていた。高いもので4~5万円する炊飯器で、いわゆる「米の味」がわかり、それを重視する消費者層の存在をうかがわせる。メーカーは韓国製・中国製が多く、日本製のものもわずかだが売られていた。多機能な日本製炊飯器は、その機能を利用したり活用したり出来る、そしてその機能による炊飯を欲する消費者が購入するが、残念ながらそう多くはない。アジア人の多い地域でも、基本的機能のみを備えた炊飯器の購入が多いという。

玄米はほとんど見られなかったが、パリの中級スーパーで売られていた。購入層や利用目的は不明だが、月に数袋が売れる程度だという。

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今回の調査でも、ヨーロッパにおける米の消費は、一般消費者レベルでも確実に拡大していることが確認できる。ただしそれは、「精米」を購入し炊飯器で炊いて食べる形態ではなく、テイクアウト用の「寿司」、「弁当」等の消費が目立つ段階である。いわば「中食」的な消費が増えていることになろう。

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そのコメであるが、イタリア産のコメが安価で多種であり、スーパーなどでは取り扱いやすいと言う。EU内で確保できることも便利である。店頭と経営者インタビューでは、弁当用、寿司用ともにイタリア産が主で、特殊な「香り米」、「長粒種米」等は東南アジア産である。当初想定していたアメリカ産(カリフォルニア産)は、一般消費者の通う中級スーパーでの加工品、「中食用」ではほぼ見受けられなかった。おそらく日本食レストラン、それもある程度の料理を出せる日本食レストランでの消費が多いのでないかと推定された。

購入理由調査では、「日本食は健康によい」とか「コメは健康によい」という認識のもと、テイクアウト用寿司や弁当を購入する消費者、炊いた「米飯」、精米を購入するという意見が極めて多かった。「日本食」あるいはコメはなぜ健康によいのかの理由は漠然としていた。
しかし「日本食」あるいはコメ消費は、一時のブームや波頭的な消費ではなく、消費者の間では普通の食品・食料となってきたことがうかがわれる。そのゆえに中級スーパーなどでも「日本食」やコメ販売コーナーが一定程度(他の穀物や加工食品と同じ程度)確保されており、しかもその種類も多くなっている。これは、消費の単なる拡大ではなく、「日本食」やコメ消費の多様化を伴いつつ、一般消費者の中に定着しつつある傾向と読み取ることが出来そうである。

残念ながら、現状では消費の多様化はまだ都市部でしかないし、消費そのものも都市部を中心としているが、小規模都市までコメ消費がひろまれば、さらにマーケットは拡大できるものと思われる。

そのためには、漠然とした「日本食」やコメへの認識ではなく、試食会や調理講習等の積み重ね等の普及活動が必要とされている。また日本産米の普及で言えば、「味がよい」とか「寿司に合う」とかの「我々の目線」ではなく、現地消費者の消費「目線」に対応した販売活動が不足しているのではないかと考えられる。

東京農業大学 立岩 寿一



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