生食用オレンジ貿易の流れ
wrote by Ken Hanawa 4/16/20
コロナウイルス感染により、負の影響を受けている方々に心よりお見舞い申し上げます。また、医療関係者の皆様には、ご尽力に感謝致します。私は、農大卒業後、いくつかの仕事に就き、最終的に農産物の貿易業務に携わり、今日に至ります。その貿易の実際について書いてみようと思います。
この30年私が取り扱ってきた品目は主に柑橘類(オレンジ、グレープフルーツ、レモンなど)、特にオレンジです。出荷元は米国カリフオルニア州セントラルバレーというロサンゼルスから北に4時間ほど車で走った地域で、一大農業地帯です。そこは生食用オレンジのみならず、アーモンド、ピスタチオなどのナッツ類、桃やネクタリンなどの大きな種子のあるフルーツ、それにブドウなどの世界有数の生産地としても知名度が高い場所です。
生食用オレンジに関して言えば、世界第一の生産量を誇ります。しかし、その地位を築くのには、欠かせないものがありました。それは、灌漑設備です。もともとこの地帯は、5月から10月までの半年間は一滴も雨が降らない不毛の地だったのです。山の雪解け水を引き、井戸を掘り、一大グリーンベルトに生まれ変わらせました。生食用オレンジの場合、総生産費の約1/3が水関係の費用であることを見れば、いかに水に頼っているかがうかがえます。
生食用オレンジの生産は、樹を植えてから4-5年で始まります。収穫はもっぱら人手によるもので、その労働力はメキシコからの移民が大半を占めます。樹にはしごをかけ、一つ一つ手でもいでいきますが、日当6000円ほどで実によく働くと感心します。収穫されたフルーツは、大きなトラックでパッキングハウスと呼ばれる選果場へ運ばれ、そこで洗浄、仕分け、梱包、冷蔵され各地へ向けて出荷されます。このパッキングハウスについて、詳しく説明しますと、実に重要かつ洗練されたシステムであることがわかります。まず、農場から運ばれてきたフルーツの生産者ごとのロット管理が徹底しています。そのフルーツごとの特徴をうまくとらえ、販売先を選定します。具体的には、品質、サイズ、糖度、棚もちの度合いなどです。ベルトコンベアーで流れてくるフルーツを高性能のカメラが、ミリ単位のキズをキャッチしグレードごとに仕分けしていきます。高品質フルーツは輸出向けに高価格で取引され、それ以外は米国内向けとなります。米国内向けは、顧客のリクエストにあわせ、バラ詰め、ネット詰め、小箱詰めなど多様なスタイルを取ることができます。それらの工程はかなりの度合いでコンピュータ化されており、ロボットの使用も見られます。それは人件費削減と米国ならではの労働者による訴訟回避として非常に重要な取り組みなのです。
さて、日本向けの場合、パッキングハウスを出たトラックは港へと向かいます。ロサンゼルスやサンフランシスコがその主な積出港となります。船に載せた後は、14日の旅を経て、日本の港へ到着することになります。日本側の港は、東京であれば大井ふ頭、横浜であれば大黒ふ頭などです。港で船降ろしされたら、植物検疫を無事クリアーしたのち、通関を経て無事入国許可となるわけです。植物検疫では、農水省の害虫のチェックと厚労省の残留農薬の検査があります。また、通関は財務省が司っており、輸入関税を払うことになります。入国後は、輸入業者が彼らの荷捌き所に荷物を移動させ、選果も兼ねて袋詰めしてスーパーへ配達されることになります。
いかがでしたでしょうか。皆さんが普段目にされるスーパーに並んでいるオレンジ。上記のようなプロセスを経て、皆さんのお手元に届くわけです。この工程は、生食用オレンジのみならず、マンゴー、パイナップル、バナナなどでもほぼ同じです。今度輸入果物に出会われた折には、産地の情景を思い浮かべていただけたらと思います。
Comment