ミャンマー農業と日本のかかわりついて

大門龍博(GIA個人会員)

筆者が所属する会社は前身を含め約50年前より民間で卸売市場開設・運営を行っている会社です。現在は千葉県内にて市場を自治体と共同で運営管理を行う事が主業務ですが、もともとは不動産開発事業として、土地の買収から建物の建設、卸売業者、仲卸業者、関連事業者の誘致までを主業務として行っておりました。このように卸売市場の立ち上げを行った経験がある会社はかなり少ないと自負しております。 このような経験を活かし、弊社では海外、特にASEAN諸国で新しい形の卸売市場の開設(含む食品流通の支援)ができないか、調査を初めたところ、少々携わる事になったのが、ミャンマーに於ける農産物流通に関する支援業務です。 今回は、上記業務の中で分かってきた、ミャンマーにおける農業や農産物流通の現状と日本の関わりについて報告致します。

 

【ミャンマーの現状】

ミャンマーはインドシナ半島西部に位置する共和国である。西側から北側を通り東側に至る大部分は中国に、南東から南側はタイに接し、南側から西側にかけてはベンガル湾をはさみインドに面している。 国土面積約68万㎡(日本の1.8倍)、人口は約5,141万人であり、かつては軍政国で統制経済化にあったが、2011年のいわゆる民政移管以降、急速に経済の自由化を推進している。 その結果2013年の実質経済成長率は8.3%まで上昇し、2011年以降ではASEAN先進5ケ国(タイ・マレーシア・シンガポール・インドネシア・フィリピン)全体の平均成長率を凌ぐまでになっている。 2012年時点でGDPにしめる農業の比率は依然30%を超えており、農業の重要性は高く、農村人口も全人口の65%を占めているが、都市人口の増加と農村人口減少が始まっており、農業機械化の要因の一つになっている。 南部のデルタ地域は稲作を、中部乾燥地域ではごまや油糧作物、豆類がさかんである。米はミャンマーの農作物で最も重要であり、栽培面積8.1百万ha、生産高32.68百万t(いずれも2009/10年)に達し、ミャンマー人のコメの消費量は200㎏~250㎏/年(日本60㎏)とされている。 農民生活の大部分は下位中間層に位置すると推測される。農薬肥料は安いタイ・中国産が多く、農業機械の浸透は遅れている。 農産物の流通は伝統的であり、産地には複数の産地市場が消費地には消費地市場が存在する。市場間の取引にはブローカーが介在し、農家は彼らに好きにされている側面も指摘されている。 マンダレーでは新しい卸売市場がつくられたが、活用されず、旧市場が使用されている。これも力のあるブローカーが新市場の使用を拒否しているからだと思われる。 一方でスーパーや外食産業の急激な拡大のなかで産直ルートの増加もみられる。 現在日本の公的機関に指摘されている問題点は以下の通りである。

・農家が農産物の市場価格の変動を予想できない

・コールドチェーンなど農産物の物流近代化

・資材・農薬流通の合理化、農業機械の導入促進

現地を調査した筆者の知人によれば、農業における指導者が少なく、行政が農民から信頼されていない場合も多いことから、農業技術の改革には時間がかかるのではないかとの指摘があった。 一方、スマートホンの普及に併せて、農業アプリの利用者がサービス開始から1年で22万人を超えている側面や、海外企業が投資を始めている現状もあり、非常にダイナミックな変化が起こる可能性は否定できない。

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【日本の関わり】

上記の問題に対し、日本政府とミャンマー政府は両国の官民が一体になり、ミャンマーのバリューチェーンを構築することを確認しFood Value Chain Road Map in Myanmar(以下Road Map)を策定した。因みに、筆者の所属する会社は、日本側のグローバルフードバリューチェーン推進官民協議会の会員であり、協議会の代表は東京農大の板垣教授が務められている。 日本政府の農業分野への協力の大半はこのRoad Mapに則して行われており、特にJICAでは多くの調査事業が行われている(この中には今後の民間の投資を前提とするものもある)。 民間企業の進出も相次いでおり、大手商社をはじめ、近畿の青果大手卸売会社が合弁で日本向けカット野菜製造会社を立ち上げや、飲食チェーンが養殖に参入するケースも見られる。今後も農業分野の投資は増大すると思われる。 ところで昨年、筆者はJICA非常勤職の関係者からの非公式ながら要請を受け、ミャンマーの農産物流通に関する調査業務の入札に関わる機会を得た。 筆者はGIA武原幹事の協力のもと、農大総研を活用した新しい現場調査方法を模索し、入札資格や実績のある大手コンサルタント会社と組み入札に参加したが、残念ながら次点に終わってしまった。

 

【今後の活動予定(結びにかえて)】

前述の通り、前回の入札では次点に終わってしまったが、本年も引き続きJICAのミャンマー調査業務に挑戦したいと考えている。 今までのコンサルタント会社では手の届かないところに、GIAを窓口として農大総研が協力をすることで、より細かで現場の実態に即した調査をすることができれば、ミャンマー、日本両国にもプラスになると思われる。 まだまだ課題が多く、大学側との調整も必要になるが、是非とも実現にこぎつけたい。

 

【引用・参考文献(参考サイト)】

・ミャンマーの農業機械・資材市場調査 2013年10月 JETRO ・ミャンマー農村地帯における農民生活実態調査マグウェン郡ミンクン村の事例 2014年3月 JETRO ・ミャンマー産業発展ビジョン 2015年7月 経済産業省 ・ミャンマー国 農業セクター情報収集・確認調査 2015年12月 JICA ・ミャンマー食品・農業関連実態調査 2014年12月 JETRO ・アジアの農業農村開発の将来展望 2017年10月6日 東京農業大学・(一財)日本水土総合研究所(シンポジウム資料) ・ミャンマー:稲作農家向けスマホアプリ「GoldenPaddy」が新時代を切り拓くhttp://agrinasia.com/archives/3194

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